夏が終わり,ひんやりとした秋の風が野原を揺らすようになると,鮮やかで黄色い花がにわかに目立ち始めます。
ほかの野草たちが勢いを弱めるこの季節。それまで息を潜め,気配を消して,時が満ちるのを待っていたセイタカアワダチソウが一斉に開花し始めます。
寂しくなった秋の野原一面をあっという間に黄金色に塗り替える様は,まるで魔法のようです。
私はこのセイタカアワダチソウを見ると,「秋が来たな。」と思うと同時に,ちょっと切ない気持ちになります。その原因は,この植物のもつ儚い習性にありました。
セイタカアワダチソウは,自らが成長する過程で,ほかの植物が育つのを邪魔する物質を根から出します。それによって,そこに生息する植物より元気に成長し,背を高く伸ばして繁殖します。
と,ここまではセイタカアワダチソウの一人勝ちなのですが,実はこの物質,ほかの植物の成長を邪魔するだけではなく,セイタカアワダチソウ自身の種子の発芽を妨げるのです。
セイタカアワダチソウ本人にしても,同じ場所で子孫がどんどん増え続けると,養分や日光の奪い合いになりかねません。結局は,繁殖しすぎることで養分が十分に得られず,共倒れになる可能性があります。
そう考えると,自らの種の発芽を抑制することもセイタカアワダチソウにとってある程度必要なことなのでしょう。
しかし,ことはうまく運ばないのが世の常。そうこうしているうちに,ほかの植物は少しずつ成長を続け,結局はススキなどのほかの植物に負けてしまったり,自分たちよりも背の高い樹木が侵入することで日光を遮られ,追いやられたりする運命をたどります。
ずっと繁殖し続けることは,やはり難しいのですね。
自分の子孫の発芽にまで影響を与える物質を出し,それでも生き続けたいと願ったセイタカアワダチソウの夢は,儚くもアワのように消えてしまうのです。
もう一つ,セイタカアワダチソウには,かわいそうな話があります。それは,あまりにも一時に繁殖するように見えるからでしょうか,この花粉が花粉症の原因といううわさが広まり,多くの人から毛嫌いされるようになってしまったこと。
実際は,この花粉は重くて風ではなかなか飛ばず,虫たちが受粉を媒介する虫媒花なので,花粉症の原因とはなり得ません。
広がったうわさによって,悪者とされたセイタカアワダチソウの疑いは晴らすべきですが,いったんついた悪い印象はなかなか拭うことは難しいのかもしれません。
いろいろな意味で,私はこのセイタカアワダチソウが儚い野草に見えます。
(花が咲く前の若いセイタカアワダチソウ。ヒメムカシヨモギなどに似ていますが,ポイントは赤い茎ですね。)
コメント
開通おめでとう㊗️又、楽しみにしてます、
見るたびに癒されています
うれしいコメントありがとうございますm(_ _)mこれからも楽しみながら、自分のペースで書いていきますね。