久しぶりに天気の良い週末。こんな日は,どこに行こうかとわくわく 😉 します。
とりあえず向かったのは,数年前に何度も通った場所(*^^*)
というのも,その場所で以前出会った生き物が,今はどうしているだろうと気になっていて,その様子を見に行こうと思ったのでした。
秋晴れの散策道。木洩れ日の優しい輝きが林道の小径を彩ります。
ゆるやかな坂を僅かに上ったその場所で足を止め,林の中に目をやると・・・。
いました。
日光を遮る深緑により,仄暗さと静寂に支配された空間のその一画に,そこだけ異彩を放つ極赤色。森のソーセージとも称される異形の存在がそこに逞しくも凛として屹立していました。
元気でいてくれてよかった 😀
ツチアケビ
その鮮烈な存在感を携えた外見とは裏腹に,この植物は生命存続に必要な養分を自分で作り出すことはできないというハンディキャップを背負ったラン科の植物なのです。
ランの仲間は,自らの葉を出すまでの間,地中の菌類から養分をもらい,生育します。しかし,このツチアケビは生長しても葉を出さず,生涯一度も光合成を行いません。ナラタケの菌に寄生し,その養分に頼ることでしか,生きていくことはできないのです。
光合成を放棄したこの植物は,それと引き換えに,他の植物が生きてはいけないような「日光の届かないフィールド」という自然界よりの贈り物を授かりました。
日光の争奪戦から撤退し,戦いを放棄したツチアケビは,ナラタケ菌と一瞬たりとも離れることはできません。ナラタケ菌にとっては迷惑な話ですが,ナラタケ自身も樹木に寄生して生きているため,人のことは言えませんね。
そして,このツチアケビ,種子にもある特徴があります。他のラン科植物は,ほこりのように細かい種子を持ち,風に飛ばされることで共生できる菌を探します。しかし,ツチアケビはその生育フィールドを鬱蒼たる樹木で覆い隠された林内に限定したため,その生活環境はどうしても風通しが悪く,風で種子を頒布させるのには不向きです。
そこで,ツチアケビはラン科植物には珍しく,動物の力を借りて種子を運んでもらうという方法を採りました。つまりは,自分の果実を食べてもらい,運んでもらうのです。そのため,ツチアケビの果実はほんのり甘く,動物に好まれるような工夫を取り入れています。ただ,その努力は人間を喜ばせてくれるほどのものではなく,私も実を噛んでみましたが,およそ美味しいと言えるレベルではありませんでした。まあ,人間に食べられたとしても,ツチアケビにとってそれほど有り難いものでもなく,却って損になることでしょうから,それでよいのだと思います。
とにかく,また出会えてよかった。
そういえば,数年前に初めて出会ったとき,実をちょっと採取して果実酒を作っていたことを思い出しました。ちょっと飲んでみようかな。
コメント
次から次と展開される植物の世界とても面白いですね優しい語り口が心をホッとさせてくれます。目まぐるしい日々の生活の中のオアシスです、楽しみにしてますよ、
うれしいお言葉、ありがとうございます。とても励みになります。自分自身が楽しみながら書いていけたらと思います。またこれからも、ご意見やご感想等ありましたら、よろしくお願いします(^o^)